計測が壊れていないか ― 月1回の点検リスト
計測は一度設定したら終わり、ではありません。気づかないうちに止まっていることがあります。しかも、止まっていても画面はエラーを出さず、数字が「少ない」だけに見えます。この記事では、壊れる原因と、月1回5分でできる点検、壊れていた期間の扱いを紹介します。
この記事でわかること
計測の止まり方と、止まった後の扱いは、1つの出来事を追うと具体的に分かります。この記事では、次の架空の会社で起きたことを例に説明します。
この記事で使う事例(仮の数字)
- 架空の会社のサイト(仮の数字)。ふだんはGA4の成果件数が、問い合わせメールの件数のおよそ8割
- 月の半ばに、フォームの外注先が送信完了ページのアドレスを「/thanks/」から「/complete/」に変えた
- その月の問い合わせメールは12件で、GA4の成果は5件。変更後の2週間はゼロで、その間もメールは6件届いていた
計測が壊れる原因
計測が壊れる原因は、計測そのものの設定ミスより、別の作業の影響であることがほとんどです。サイトやフォームを触る人と、計測を見る人が別であることが多く、変更の影響に誰も気づかないからです。よくある原因は次のとおりです。
- サイトの改修:ページを作り直したときに、計測用のコードが引き継がれなかった
- フォームの変更:送信完了ページのURLが変わり、成果が数えられなくなった
- プラグインの更新:設置に使っていたプラグインの仕様が変わった
- タグの整理:不要なタグを消すつもりで、必要なものまで消した
- ドメインやSSLの変更:URLが変わり、除外設定や連携が合わなくなった
見落とされやすいのが、Cookieの同意を求める表示(同意バナー)の導入や設定変更です。同意しなかった人の計測が止まる設定にすると、訪問数や成果の件数はその日から減ります。これは故障ではなく設定どおりの動きですが、変更日を記録していないと「急に集客が落ちた」と誤解します。
事例の会社でも、フォームの外注先が送信完了ページのアドレスを「/thanks/」から「/complete/」に変えただけで、GA4の成果はその日からゼロになりました。サイトは正常に動き、問い合わせも届き続けるため、誰も困らないまま数か月が過ぎることもあります。
防ぐための第一歩は、変更の依頼に一言添えること。制作会社やフォームの外注先に改修を頼むときは、「計測用のタグが全ページに入っていること」「送信完了ページのアドレスを変える場合は事前に知らせること」の2点を、依頼の文面に入れておきます。社内でプラグインを更新する場合も、更新した日をメモに残し、翌日に訪問数と成果の件数を確かめる、という決まりにしておくと安心です。
ただし、数字が減ったことがすべて故障とは限りません。故障の場合は、ある日を境に段差のように落ちるのが典型です。季節や景気による減少は、数週間から数か月かけてなだらかに下がることが多く、形が違います。日別の折れ線で「段差」か「坂」かを見分けてから、原因を探してください。
月1回の点検(5分)
点検は、月に1回、次の4か所を見るだけです。どれも、壊れたときに数字が不自然な動きをする場所です。細かい分析は不要で、「いつもと形が違うか」だけを見ます。
| 見るところ | 異常のサイン |
|---|---|
| 日別の訪問者数 | ある日を境にゼロ、または半分以下 |
| 成果(キーイベント)の件数 | 問い合わせメールは来ているのにゼロ |
| 主要ページ一覧 | いつもあるページが消えている |
| 流入元の内訳 | 「直接アクセス」が急に増えた |
点検の手順は次のとおりです。
- GA4で期間を直近90日にし、日別の訪問者数の折れ線を見る(段差がないか)
- 成果の件数を前月の合計で出し、問い合わせメールや受付の記録の件数と並べる
- ページ別の表で、トップページ・サービスページ・問い合わせページがいつもどおり並んでいるかを見る
- 流入元の内訳で、「直接アクセス」や「参照」の割合が前月から大きく変わっていないかを見る
- 気づいたことと点検した日を、1行メモに残す
毎月同じ順で見ることが、5分で終わらせるこつ。手順が決まっていれば、担当者が代わっても同じ点検ができます。点検の日は、月初の報告を作る前にしておくと、壊れた数字をそのまま報告に載せることを防げます。
最も効くのは2番目です。事例の会社では、問い合わせメールが月12件届いているのに、GA4の成果は5件でした。ふだんの8割なら10件ほどになるはずなので、成果の計測がどこかで途切れています。完全に一致しなくても構いませんが、大きくずれていれば設定を確かめます。あわせて、サイトを改修した日やフォームを変えた日は、その場で自分で1件送信して記録を確かめる習慣を付けてください。
ずれが見つかったら、原因は次の順で探すと早く見つかります。まず、自分でテストの問い合わせを1件送り、GA4のリアルタイムの画面やDebugViewに成果が出るかを確かめます(使い方はDebugViewの使い方)。出なければ、送信完了ページのアドレスや、成果の設定の条件が変わっていないかを見ます。出るのに件数がずれるなら、電話やメールの問い合わせが混ざっていないか、同じ人の二重送信が数えられていないかなど、数え方の違いを疑います。
壊れていた期間のデータの扱い
壊れていた期間のデータは、後から復元できません。そのうえで大事なのは、欠けたデータを他の期間と同じように扱わないことです。欠けた期間を含めたまま平均や前年比を出すと、「成果が落ちた」という誤った結論になるからです。次の順で扱います。
- 期間をメモに残す:「◯月◯日〜◯月◯日は計測が止まっていた」とレポートに書き添える
- その期間を比較に使わない:前年比較などで、その期間が含まれると誤った結論になる
- 代わりの数字を探す:問い合わせメールの件数、サーチコンソールの表示回数など、別経路の記録で補う
事例の会社で、別経路の数字で補ってみます。ふだんはGA4の成果件数が問い合わせメールの件数のおよそ8割です。計測が止まっていた2週間に問い合わせメールが6件届いていたので、GA4で数えられていたはずの件数は、6件×8割でおよそ5件と見積もれます。ただし、これはあくまで推定なので、レポートには「推定値」と明記し、実際に数えた数字と同じ列に混ぜないでください。
「データがない」と書くことは、悪いことではありません。無かった期間を隠して平均に混ぜるほうが、後の判断を誤らせます。来年、前年比を見る人のためにも、メモは計測ツールの注釈機能など、誰もが見る場所に残します。
壊れていた期間がはっきりしないこともあります。その場合は、日別の折れ線で段差が始まった日を探し、その日にサイトやフォームで何か変更がなかったかを、制作会社や社内の担当者に確かめます。変更の記録が残っていれば、原因と期間を同時に特定できます。
よくある質問
Q. 点検は誰がやればよいですか。
数字を報告に使う人がやるのがいちばん確実です。報告を作る人は、数字がおかしいと困る立場なので、異常に気づきやすいからです。担当を1人に決め、その人が休むときの代わりも決めておいてください。
Q. 点検を自動にできますか。
一部はできます。成果の件数が一定の日数ゼロのままなら知らせる、といった仕組みを作れば、月1回の点検より早く気づけます。ただし、問い合わせメールの件数との突き合わせは人が行うほうが確実です。
Q. 点検で異常が見つかりましたが、直し方が分かりません。
まず、異常が始まった日と、その日にあった変更を書き出し、サイトを作った会社や設定をした人に伝えてください。「◯月◯日から成果がゼロ。同じ日にフォームを改修した」と伝えれば、原因の見当が付きやすくなります。直した後は、テストの送信で記録を確かめ、直した日もメモに残します。
まとめ
計測は放っておくと、別の作業のついでに壊れます。月1回、問い合わせメールの件数とGA4の件数を突き合わせるだけでも、長期間の取りこぼしを防げます。壊れていた期間は記録し、比較から外します。計測は設定して終わりではなく、点検し続けるものです。
確認リスト
- 月1回、日別の訪問者数を見ている
- 成果の件数を実際のメール件数と突き合わせている
- サイトを改修したら、その日に送信テストをしている
- 計測が止まっていた期間を記録している
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