BtoBで最初に集めるべきデータは何か
BtoBの商材は、検討期間が長く、関わる人も複数です。そのため「広告を出したら売れた」という単純な流れになりません。何を集めれば判断に使えるのかが分かりにくい分野です。
この記事では、商談までの流れを3段階に分け、最初に集めるべきデータを整理します。すべてを一度にそろえる必要はありません。最低限の5項目と、Web上のデータと商談の結果をつなぐ方法、つまずきやすいところまでを順にまとめます。
BtoBの問い合わせは件数が少ないぶん、数え方の違いがそのまま結論の違いになります。そこを数字で確かめられるよう、次の1社の例を最後まで使います。
この記事で使う事例(仮の数字)
- 社員30人ほどの、法人向けITサービスの会社(架空の会社)。営業は2人
- フォームに届く問い合わせは月15〜20件。うち見込み客からの問い合わせは月10件前後
- 9月は届いた20件のうち、売り込み6件・採用関係3件で、見込み客からは11件(8月は15件中12件)
- 7〜9月の3か月で、見込み客からの問い合わせは30件
商談までの3段階と、それぞれで集めるもの
BtoBの顧客は、Webで調べる段階、問い合わせる段階、営業と話す段階を順に通ります。段階ごとに、データのある場所と集める担当が違います。まずは、どの段階で何が手に入るのかを分けて整理しておくと、集める作業の分担が決めやすくなります。
1. 問い合わせ前(Web上の動き)
どこから来て、何を見て、どこで離れたか。GA4やSearch Consoleで分かる範囲です。この段階のデータは、個人を特定しない形で集まり、全体の傾向を見るのに向いています。
- 流入元(検索・広告・SNS・直接アクセス・他サイトからのリンク)
- 検索された語(Search Console)
- よく見られているページ、離脱が多いページ
この段階で最初に確かめたいのは、問い合わせフォームの送信完了がGA4で数えられているかどうかです。ここが数えられていないと、どの流入元やページが問い合わせにつながったかを、後から一切たどれません(GA4の「キーイベント」設定 ― 問い合わせ完了を成果として数える)。設定の確認は、テスト送信を1回して、GA4のリアルタイムの画面に出るかを見るだけで済みます。
2. 問い合わせ時(フォームで受け取る情報)
ここが分かれ目です。フォームの項目が多いほど送信されにくくなり、少ないほど後の判断材料が減ります。後で振り分けに使う項目だけに絞ります。
- 会社名・担当者名・連絡先(連絡に必要)
- 問い合わせの種類(サービスの相談か、採用か、その他か)
- 差し支えなければ、検討の時期や社員規模
判断の基準は、「答えによって対応を変えるか」です。検討の時期を聞いても、答えに関係なく同じ対応をするなら、その項目は外して構いません。反対に、問い合わせの種類は、営業の対象かどうかを分けるのに欠かせない項目です(BtoBフォームの設計)。
3. 商談後(結果)
問い合わせが商談になったか、受注に至ったかです。Web上のデータだけでは分からず、営業側の記録と突き合わせる必要があります。専用の仕組みが無くても、表計算ソフトの一覧で十分です。
よくある誤りは、商談の結果を営業担当の手元のメモや記憶に置いたままにすることです。担当が替わったり、忙しい月に記入が漏れたりすると、その期間の結果が丸ごと失われます。問い合わせを受けた時点で一覧に1行を作り、商談化・受注の列を後から埋める形にしておくと、記入漏れに気づきやすくなります。3つの段階それぞれについて、誰がどこに記録するかを先に決めておいてください。
最低限そろえたい5項目
最初から細かく分類する必要はありません。次の5項目がそろえば、判断の材料になります。どれも、問い合わせの一覧の列として並べられる項目です。
| 項目 | 何に使うか |
|---|---|
| 問い合わせ日 | 施策を実施した時期と突き合わせる |
| 流入元 | どの経路からの問い合わせが商談になるかを見る |
| 問い合わせの種類 | 営業対象外の問い合わせを除いて数える |
| 商談化したか | 問い合わせの数ではなく質を見る |
| 受注したか | 売上につながった経路を確かめる |
5項目のうち、とくに大事なのは「問い合わせの種類」。問い合わせフォームには、営業の売り込み、採用への応募、取引先からの連絡なども届きます。これらを除かずに数えると、問い合わせが増えたように見えても、見込み客からの問い合わせは増えていない、ということが起こります。
事例の9月で見てみます。届いた問い合わせは20件で、そのうち営業の売り込みが6件、採用関係が3件なので、見込み客からの問い合わせは11件です。8月は15件で見込み客からが12件だったので、合計は5件増えていても、見込み客からの問い合わせはむしろ1件減っています。BtoBでは「問い合わせ数」より「商談になった数」を追うほうが実態に近くなります(BtoBのリード定義 ― MQLとSQLを分ける)。
Web上のデータと商談の結果をつなぐ
問い合わせの前と後をつなぐと、受注になりやすい経路が見えてきます。つなぐ方法は、手間の少ない順に3つあります。最初から完璧を目指さず、まずは1つ目か2つ目から始めてください。
- フォームに「どこで知ったか」を書いてもらう:手軽ですが、記憶に頼るため正確ではありません
- フォームの送信完了を計測し、流入元ごとに数える:GA4で設定できます。誰が送ったかは分かりませんが、経路ごとの傾向は見えます
- 問い合わせ一覧に流入元を記録する:フォームの隠し項目に流入元を入れる方法です。設定に手間がかかります
つなぐ価値を、事例の数字で示します。7〜9月の見込み客からの問い合わせ30件を流入元別に分け、商談になった件数を並べました。
| 流入元(事例・仮の数字・7〜9月) | 問い合わせ | 商談化 |
|---|---|---|
| 検索 | 12件 | 6件 |
| 広告 | 10件 | 2件 |
| 紹介・直接 | 8件 | 6件 |
問い合わせの数だけなら、検索と広告が上位。商談化まで見ると、広告は10件中2件にとどまり、紹介・直接は8件中6件が商談になっています。件数が少ないので確定はできませんが、広告費を増やす前に、広告から来る問い合わせの中身を確かめる理由にはなります。四半期に1回、経路ごとの件数と商談化の件数を並べるだけでも、この違いは見えてきます。
3つ目の方法である隠し項目は、効果が大きい分、設定に注意が要ります。フォームの送信と同時に、訪問者が最初に来た経路(広告のパラメータなど)を隠し項目に入れて送る仕組みで、問い合わせの一覧に1件ずつ流入元が残ります。設定には、フォームの仕組みとGTMの両方を触る必要があるので、社内で難しければ、まずは2つ目の方法で経路ごとの件数を取り、必要になってから検討してください(UTMパラメータの付け方 ― 社内で決めておく3つのルール、リードの獲得元を記録する ― 後から聞けないこと)。
つまずきやすいところ
集め始めてから多いつまずきは、件数、時間差、記録の分断の3つです。どれも、BtoBの商談の性質から自然に起きることです。あらかじめ知っておけば、数字を読み違えずに済みます。
件数が少なく、率で判断できない
BtoBでは問い合わせが月に数件ということも珍しくありません。1件の増減で率は大きく動き、事例のように月10件前後の会社で、10件が12件になれば「20%増」でも、実際の差は2件。数か月分をまとめて見る、件数そのものの併記といった扱いが必要です(件数が少ないときに、率だけで判断しない)。
検討期間が長く、施策と結果の時期がずれる
今月の受注が、半年前に読まれた記事から始まっていることもあります。施策の効果を月単位で切ると、見誤ります。問い合わせ日と受注日の両方を記録しておけば、問い合わせから受注までに平均何か月かかっているかが分かり、施策の効果をいつ判定すべきかも決められます(商談期間が長いときの効果測定)。
Webの担当と営業の記録が分かれている
Webの担当はGA4を、営業は自分の顧客リストを見ていて、2つがつながっていないことがよくあります。この状態では、「Webから来た問い合わせが受注したか」を誰も答えられません。月に1回、30分だけ両者で問い合わせの一覧を見合わせ、商談化と受注の列を埋める時間を決めておくと、記録のつながりが生まれます。
集め始めた後の見直し
5項目の一覧は、作った時点では完成ではありません。3か月ほど使うと、「この選択肢では分けられない」「この列は誰も埋めていない」といった問題が見えてきます。四半期に1回、30分だけ一覧そのものの見直しの時間を取ってください。
見直しで確かめるのは、次の3点。
- 空欄の多い列:流入元や商談化の列に空欄が多いなら、誰が、いつ埋めるかを決め直します。
- 「その他」の多い選択肢:問い合わせの種類で「その他」が2割を超えるなら、中身を読んで選択肢を足します。
- 定義のずれ:「商談化」を、初回の打ち合わせをした時点とするか、見積もりを出した時点とするかが、人によって違っていないかを確かめます。
3つ目の定義のずれは、数字の意味を大きく変えます。事例の会社で、営業Aは初回の打ち合わせで「商談化」と書き、営業Bは見積もりを出してから書いていたとします。同じ10件ずつの問い合わせでも、Aの担当分は6件が商談化、Bの担当分は3件が商談化、という差が、実際の差ではなく数え方の差から生まれます。定義は一覧の1行目に書いておき、見直しのたびに全員で読み合わせてください。
見直しで項目を増やしたくなることもあります。そのときは、「増やした項目で、何を決めるか」を先に書けるものだけを足します。業種や社員規模のように、分けて見れば打ち手が変わる項目は足す価値がありますが、「念のため」の項目は入力の手間だけが増え、ほかの列の空欄も増やします。
まとめ
BtoBで最初に必要なのは、大量のデータではありません。問い合わせ日・流入元・種類・商談化・受注の5項目がそろえば、どの経路に力を入れるかを判断できます。BtoBのデータ集めは、問い合わせの一覧を1つ作り、そこに商談の結果までつなぐことから始まります。今月中に5列の一覧を作り、過去3か月分の問い合わせを書き入れてください。
確認リスト
- 問い合わせの一覧が1か所にまとまっている
- 流入元が分かる形になっている
- 営業対象外の問い合わせを分けて数えている
- 商談化・受注の結果が記録されている
- 件数が少ない月は、率だけで判断していない
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