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目標値はLTVから逆算する

CPAとは ― 広告の費用対効果を見る最初の指標

CPAは、成果1件を得るためにかかった費用です。広告の良し悪しを見るとき、最初に確認する指標になります。計算は割り算ひとつですが、何を費用に含め、何を成果に数えるかで金額は大きく変わります。社内でこの前提が揃っていないと、同じ「CPA」という言葉で別の数字を話すことになります。

CPAは、費用の範囲や目標の置き方を変えると、同じ広告でも数字ががらりと変わります。その変わり方を追えるように、この記事では次の架空の会社の1か月分の数字を、最後まで同じものとして使います。

この記事で使う事例(架空の会社・仮の数字)

  • 法人向けサービスの検索広告。月の出稿費18万円で、クリック900回・成果9件(資料請求6件、見積もり依頼3件)
  • 成果9件の内訳は、経路A(一般検索の広告)が費用12万円で4件、経路B(ディスプレイ広告)が費用6万円で5件
  • 出稿費のほかに、運用代行費が月5万円、LP制作費の月割りが3万円かかっている
  • 利益ベースのLTVは72万円、成果から受注に至る率は過去の記録で10%

計算式と、含める費用・数える成果

CPA = かかった費用 ÷ 成果件数

事例でいえば、出稿費18万円で成果が9件なので、CPAは2万円です。式は誰が計算しても同じですが、分子と分母に何を入れるかは人によって違います。多くの場合、分子は広告の出稿費だけ、分母は計測ツールに記録された成果すべて、という形で出されています。しかし、この出し方は判断に使うには不十分です。

分子(費用)と分母(成果)は、次の基準で決めてください。

項目決めること理由
費用出稿費に加え、運用代行費・クリエイティブ制作費・LP制作費(期間で按分)を含めるか出稿費だけのCPAと全部含めたCPAでは、倍近く違うことがある
成果資料請求・見積もり依頼などを同じ1件と数えるか、分けるか商談につながる確率が違うものを混ぜると、CPAが安く見える

事例の数字で比べます。出稿費だけで全成果を数えればCPAは2万円(18万÷9)です。費用を全部含めて(18万+5万+3万=26万円)全成果を数えると約2.9万円、さらに見積もり依頼3件だけを数えると約8.7万円(26万÷3)。同じ広告でも、出し方しだいで4倍以上の開きが出ます。CPAを報告するときは、どの費用で、どの成果について出したかを添えてください。

もう一つ決めておきたいのが、費用と成果を数える期間。月末に広告をクリックし、翌月に問い合わせた人は、どちらの月の成果にするかでCPAが変わります。広告の管理画面はクリックした日に成果を記録する設定が多く、フォームの件数は問い合わせた日で数えます。どちらの日付で数えたかを決め、費用の範囲・成果の種類とあわせて、毎月同じ方法で出します。

目標CPAの決め方

「業界平均のCPA」は目標に使えません。商材の単価も利益率も、成果の定義も会社ごとに違うためです。目標は、成果1件がいくらの利益を生むかから逆算します。そのために必要なのは、顧客1人から得られる利益(LTV)と、成果から受注に至る率の2つです。

  1. LTVを利益ベースで出す … 売上ではなく粗利で出します。出し方はLTVとは ― 中小企業での簡単な出し方で扱っています
  2. 成果から受注に至る率を出す … 問い合わせ100件のうち何件が受注になったかを、過去の記録から数えます
  3. 掛け合わせる … LTV(利益)× 受注率 = 成果1件の価値
  4. 余裕を取る … 上限いっぱいでは利益が残らないため、価値の半分程度を目標にします

事例で試します。利益ベースのLTVが72万円、成果からの受注率が10%なので、成果1件の価値は7.2万円です。CPAをその半分の3.6万円に抑えれば、広告費を払っても利益が残る計算になります。費用を全部含めた事例のCPA(約2.9万円)は、この目標の内側に収まっています。よくある誤りは、受注率を記録からではなく感覚で置くことで、これでは目標CPAも感覚の数字になります。

受注率の見積もりには幅があります。過去の件数が少ないと、受注率は数ポイント簡単に動くからです。そこで、受注率を少し変えたときに目標CPAがどう動くかを並べておきます(事例のLTV 72万円で計算)。

受注率 成果1件の価値 目標CPA(価値の半分)
8% 5.76万円 2.88万円
10% 7.2万円 3.6万円
12% 8.64万円 4.32万円

受注率が2ポイント違うだけで、目標CPAは7千円以上動きます。記録が少ないうちは、低めの受注率で出した目標を上限として使うのが安全です。

当てはまらない場合もあります。新しい商材でLTVも受注率も分からないときは、逆算ができません。その場合は、粗利から「1件の受注にいくらまで払えるか」を先に決め、仮の受注率を置いて目標を出します。3か月ほど運用して実際の受注率が分かったら、その数字で目標を出し直してください。

受注率を出すには、どの問い合わせが受注につながったかの記録が要ります。記録の付け方はリードの獲得元を記録する ― 後から聞けないことをご覧ください。

目標CPAを社内で共有するときの説明

目標CPAを決めたら、広告を運用する人だけでなく、経営者や営業にも共有します。共有するのは金額だけでなく、その金額の根拠です。根拠が伝わっていないと、「もっと安くできないのか」「業界ではもっと安いと聞いた」といった声に、そのつど説明し直すことになります。

説明は、次の1行の式で示すのが分かりやすい方法です。「利益ベースのLTV 72万円 × 受注率10% = 成果1件の価値7.2万円。その半分の3.6万円を目標CPAとする」。この式があれば、受注率が上がれば目標CPAも上げられること、LTVが下がれば目標も下げる必要があることが、誰にでも分かります。

仮に、営業から「最近は受注率が15%に上がっている」という話が出たら、式に当てはめて目標CPAを5.4万円に見直す、という議論ができます。数字の根拠を共有しておくことで、目標は営業とマーケの共通の物差しになります。前提が変わったときは、式ごと一緒に見直してください。

CPAだけで判断すると危ないこと

CPAは「安いほど良い」と読まれがちですが、それだけで判断すると誤ります。CPAを下げるだけなら、成果のハードルを下げれば済むからです。フォームの項目を減らし、資料請求を成果に加えれば件数は増えますが、その先の商談化率が落ちていれば売上は増えません。CPAを見るときに一緒に確認すべき点は、次の3つです。

  • その先の率 … CPAは商談化率・受注率とセットで見ます。CPAが半分でも商談化率が4分の1なら、商談1件あたりの費用は倍です
  • 経路ごとの内訳 … 全体のCPAは平均です。指名検索の広告はCPAが低く出ますが、広告が無くても来た人かもしれません。指名と一般は分けます
  • 件数 … 事例の月9件でも、1件の増減でCPAは1割ほど動きます。数か月分をまとめて見ます(件数が少ないときに、率だけで判断しない)

商談化率を組み合わせると、見え方がどう変わるかを事例の2つの経路で確かめます。商談化率は、営業の記録から出した仮の数字です。

経路 CPA 商談化率 商談1件あたりの費用
経路A 3万円(12万÷4件) 75%(4件中3件) 4万円(12万÷3件)
経路B 1.2万円(6万÷5件) 20%(5件中1件) 6万円(6万÷1件)

CPAだけなら、経路Bが経路Aの半額以下で優秀に見えます。ところが商談1件あたりでは、経路Aが4万円、経路Bが6万円で、経路Aのほうが少ない費用で済んでいます。営業の手間まで考えれば、差はさらに開きます。予算を動かす判断は、商談1件あたりの費用まで出してから行ってください。

月ごとの比較にも同じ注意が要ります。事例で、翌月の成果が9件から10件に増えると、出稿費が同じでもCPAは2万円から1.8万円に下がります。1件の違いは偶然の範囲なので、「1割改善した」とは言えません。CPAは単独の数字ではなく、商談化率・経路別の内訳・件数と並べて初めて判断に使えます。

CPAを下げる順番

CPAを下げたいとき、入札や予算の調整から始めがちですが、効果が大きく確実な順に手を付けるほうが無駄がありません。費用を減らすか成果を増やすかのどちらかしかないため、まず「成果を生まない費用」を削り、次に「同じ費用で成果を増やす」手を打ちます。入札の調整は、その後でも遅くありません。

  1. 成果につながらない配信を止める … 過去数か月で成果の無いキーワードや配信面を除外します。最も確実です
  2. 着地ページを直す … 同じ費用で成果が増えれば、CPAは下がります
  3. フォームの離脱を減らす … 送信直前で止まっている人を拾います
  4. 入札や予算を調整する … 上の3つを終えてから行います

最初の2つの効果を、事例で確かめます。出発点は、出稿費18万円・成果9件で、CPAは2万円です。

  1. 過去3か月で成果が0件、費用が月3万円のキーワード群を除外する → 費用15万円で9件なら、CPAは約1.67万円(15万÷9)
  2. 着地ページを直し、成果が9件から11件に増える → CPAは約1.36万円(15万÷11)

除外で気をつけたいのは、判断に十分なクリック数があるかどうかです。事例の成果の率は1%(9÷900)なので、平均100クリックに1件の計算になります。20クリックで0件は偶然の範囲なので、たとえば「200クリック以上で0件なら除外」のように、率から逆算した基準を先に決めます(数字は仮の基準)。事例で除外したキーワード群は3か月で450クリック・0件で、この基準を満たしています。

下げる途中でよくある誤りと、その直し方も挙げておきます。

  • 変更を一度に重ねる:除外と着地ページの修正を同じ週に行うと、どちらが効いたか分からない。1か月に1つずつ変え、変えた日を記録する
  • 成果の数え方を途中で変える:資料請求を成果に加えた月からCPAが下がるのは当然で、改善ではない。定義を変えた月は、前月と比べずに注記を付ける
  • 入札を下げすぎる:単価を大きく下げると表示そのものが減り、件数が落ちる。CPAと件数を並べ、件数が2割以上減ったら戻す(数字は仮の基準)

目標CPAの見直しも、決まった時期に行います。半年に1回など、受注率とLTVを出し直す時期を決めておき、その数字で目標を置き直します。価格改定や商材の追加があったときは、時期を待たずに見直してください。

変更の効果を見るときは、同じ時期の前年や、変更していない経路と比べてください。季節要因で下がっただけのCPAを施策の効果と読まないためです。

よくある質問

CPAとCPO、CACは何が違いますか

違いは、分母に何を置くかです。CPAは問い合わせなど途中の成果1件、CPOは注文1件、CACは新しい顧客1社を得るための費用を指すのが一般的です。問い合わせを成果にしている会社では、CPAよりCACのほうが売上に近い数字になります。報告では、どの指標かを名前で明記してください。

GA4と広告の管理画面で、CPAが違います

違うのが普通です。成果を記録する日付の決め方や、複数の経路を通った人の成果をどこに割り振るかが、ツールごとに違うからです。どちらが正しいかではなく、目的に合わせて使い分けます。広告の中の比較には管理画面の数字を、サイト全体の中での比較にはGA4の数字を使い、報告ではどちらかに統一してください。

CPAが目標を下回ったら、予算を増やしてよいですか

増やす余地はありますが、同じCPAのまま件数が伸びるとは限りません。予算を増やすと、それまで配信していなかった、成果につながりにくい検索や相手にも広告が出るからです。増やすなら2〜3割ずつにし、増やした後の1か月でCPAと件数の両方を確かめます。件数が伸びずにCPAだけ上がったら、そこが今の上限です。

まとめ

CPAは「費用 ÷ 成果件数」です。費用にどこまで含めるか、成果に何を数えるかを社内で揃えないと、事例のように2万円とも8.7万円とも言える数字を、同じ言葉で比べることになります。目標値は業界平均ではなく、LTVと受注率から逆算します。定義を揃え、自社の数字から目標を決めたうえで、商談化率とセットで判断してください。

確認リスト

  • 費用に運用費・制作費を含めるか決めた
  • 成果の種類を分けて計算している
  • 目標CPAをLTVと受注率から逆算した
  • CPAと商談化率を並べて見ている
  • 指名検索と一般検索を分けている

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施策の効果測定と実験設計が専門。 世に出ている成功事例の多くは、比較対象が置かれていないか、社会的背景と施策が分離されていないにもかかわらず、なぜか過去の多数の失敗事...

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