KPIとKGIの違い ― 毎週見る数字はどちらか
KGIは最終的に達成したい結果、KPIはそこに至る途中の数字です。言葉の定義はこれで足ります。実務で問題になるのは定義ではなく、どの数字をKPIに選ぶかです。ここを間違えると、KPIを達成してもKGIが動きません。
この記事でわかること
KGIからKPIを決める流れは、数字を入れて計算すると腹に落ちます。ここからは、次の架空の会社を1つの例として、選び方から見る頻度までを説明します。
この記事で使う事例(仮の数字)
- 業務用機器のメーカー(架空の会社・仮の数字)。KGIは年間の新規受注24件
- 過去の実績では、問い合わせの40%が商談になり、商談の50%が受注している
- そこから割り戻したKPIは、問い合わせ月10件(週2.5件ほど)と商談化率40%
2つの違い
KGIとKPIの違いは、意味だけでなく、動く速さと見る頻度にあります。KGIは結果なので動きが遅く、KPIは途中の数字なので速く動きます。この速さの違いが、どちらを毎週見るかを決めます。
| KGI | KPI | |
|---|---|---|
| 意味 | 達成したい結果そのもの | 結果に至る途中の数字 |
| 例 | 年間売上、新規受注件数 | 問い合わせ件数、商談化率 |
| 動く速さ | 遅い。数か月〜1年 | 速い。週〜月 |
| 見る頻度 | 四半期・年次 | 週次・月次 |
事例のKGIは年間の新規受注24件で、1週あたりでは0.5件です。KGIを毎週見ても「今週は0件」「今週は1件」を繰り返すだけで、手を打つ材料になりません。
KGIとKPIのつながりを、事例の計算でたどっておきます。KGIの年間24件は、月あたり2件です。過去の実績では問い合わせの40%が商談になり、商談の50%が受注しているので、月2件の受注には商談4件、問い合わせ10件が要ります。この「月10件の問い合わせ」と「商談化率40%」がKPIです。KPIの数字は、KGIから率をたどって割り戻すことで、根拠のある数字になります。
この割り戻しを図にしたものがKPIツリー。KGIを一番上に置き、それを分解した数字を下に並べると、どの数字がどの結果を支えているかが一目で分かります。
KPIの選び方
KPIは、次の3つをすべて満たす必要があります。1つでも欠けると、達成してもKGIが動かないか、動いても打つ手がない数字になるからです。候補の数字を1つずつ当てはめて確かめてください。
| 条件 | 確かめ方と、満たさないときの扱い |
|---|---|
| 1. KGIとつながっている | その数字が増えたときKGIも増えると説明できるか。できなければ参考値。訪問数は増えても問い合わせが増えないことがよくある |
| 2. 自分たちで動かせる | 季節や景気でしか動かない数字は、打つ手がなく、努力と結果が対応しない |
| 3. 毎週意味のある変化が出る | 月2〜3件の数字を週次で見ても増減の大半は偶然。1段階手前の数字(商談数ではなく問い合わせ数など)にする |
候補を当てはめた例。訪問数は、増えても問い合わせが増えるとは限らないので1つ目の条件で外れます。検索順位は、自分たちの記事の改善で動かせる面もありますが、検索エンジン側の変化で大きく動くため2つ目の条件が弱く、参考値向きです。問い合わせ件数は3つとも満たしやすく、KPIの中心に置けます。受注件数はKGIに近すぎて、週単位では変化が読めないので3つ目で外れます。
当てはまらない場合として、社員数人で、問い合わせも月数件という会社では、KPIを3〜5個そろえる必要はありません。「問い合わせ件数」と「そのうち見積もりまで進んだ件数」の2つを月次で見るだけでも、KGIとのつながりは十分に追えます。数字を増やすより、2つの数字が動いたときに何をするかを決めるほうが先です。
3つ目に関連して、件数が少ないときに率をKPIにするのは避けます。分母が小さいと率は大きく振れ、判断を誤るからです。その場合は件数そのものを見てください(件数が少ないときに、率だけで判断しない)。
KPIが機能しなくなる条件
選び方が正しくても、運用の中でKPIが機能しなくなることがあります。多くの場合、数字を追うこと自体が目的になり、KGIとのつながりが忘れられるのが原因です。典型的な条件は次の3つです。
- 数を増やすこと自体が目的になる:問い合わせ件数をKPIにすると、質の低い問い合わせを増やしても達成できる。件数と一緒に商談化率のような質の指標を置く(質の数値化は問い合わせの「質」を数字にする)
- KPIが多すぎる:10個並べると、どれを優先するか決まらない。3〜5個に絞る
- 達成しても何も起きない:上回ったとき・下回ったときの行動が決まっていないと、報告のための数字になる
3つ目の「動いたときの行動」は、次のような短いルールで書いておきます。
- 問い合わせが2週続けて週2件を下回ったら、流入元ごとの内訳を見て、減った流入元を特定する
- 商談化率が2か月続けて30%を下回ったら(事例のKPIは40%)、営業と一緒に直近の問い合わせの内容を読み返す
- 問い合わせが月の目標を2か月続けて上回ったら、営業の対応が追いつくかを確かめる
上回ったときのルールも書いておくのが大事な点です。目標を超えたことを喜ぶだけで終わると、対応が遅れて商談を逃すことがあります。
事例の会社で、資料請求も問い合わせに含めるようにした結果、問い合わせは目標の月10件を超えて15件になったのに、商談は先月と同じ4件だった、ということが起こりえます。商談化率は40%から約27%に下がっています。件数と商談化率をセットにしていれば、この達成が見かけだけだと気づけます。
見る頻度を分ける
すべての数字を同じ頻度で見る必要はありません。数字ごとに動く速さが違うので、速さに合った頻度で見るほうが、判断を誤らず負担も減ります。次のように分けます。
- 週次 … KPIのうち、動きの速いもの2〜3個。訪問数・問い合わせ件数など
- 月次 … KPI全体と、流入元ごとの内訳。ここで打ち手を決める
- 四半期 … KGIと、KPIの選び方そのものの見直し
週次で見るときの判断の基準は、直近4週の平均との比較。事例の会社で、今週の問い合わせが3件、直近4週の平均が2.5件なら、普段の範囲の中です。「4週平均の半分以下、または2倍以上になったら理由を調べる」のように、調べ始める線を決めておくと、毎週の小さな上下に振り回されずに済みます。
忘れがちなのは3つ目です。商材や集客の方法が変わると、以前はKGIにつながっていたKPIが、つながらなくなることがあります。四半期ごとに「KPIが増えた期間に、KGIも増えていたか」を並べて確かめてください。
よくある質問
Q. KGIとKPIは、どちらから先に決めますか。
KGIが先です。KPIは、KGIから率をたどって割り戻して決めるものなので、KGIが無いまま選ぶと、測りやすい数字や見栄えのいい数字が選ばれがちです。KGIは売上や受注件数など、事業として達成したい結果を1つに絞ってください。
Q. マーケと営業で、別々のKPIを持ってよいですか。
持って構いませんが、両方が同じKGIにつながっていることを確かめてください。例えばマーケは問い合わせ件数、営業は商談からの受注率を持ち、その間をつなぐ商談化率は両者で一緒に見る、という分け方です。境目の数字を誰も見ていない状態になると、マーケは件数を達成し、営業は「質が悪い」と言う、という食い違いが起きます。
Q. KPIを変えると、過去と比べられなくなりませんか。
変える前の数字も、しばらくは参考値として並べて記録してください。新しいKPIの過去分を遡って出せるなら、半年分ほど出して並べると、変えた後もすぐに比べられます。変えた日と理由も記録に残します。
まとめ
KGIは達成したい結果、KPIはそこに至る途中の数字です。毎週見るのはKPIで、KGIは四半期単位で確認します。KPIは「KGIとつながっている」「自分たちで動かせる」「毎週意味のある変化が出る」の3つを満たす必要があります。数字が動いたときの行動まで先に決めて、初めてKPIは機能すると考えてください。
確認リスト
- KGIを1つに決めている
- KPIが3〜5個に絞られている
- 各KPIがKGIにつながる理由を説明できる
- 件数が少ない指標を率で見ていない
- KPIが下回ったときの行動を決めている
記事に関することやお仕事のご相談は、下記よりお問い合わせください。

