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データマーケティングとは? よくある3つの誤解

「データマーケティング」という言葉を目にする機会が増えました。ところが、何をすることなのかは人によって説明が違います。ツールの導入を指すこともあれば、分析の手法を指すこともあります。

この記事では、言葉の定義をなぞる代わりに、「判断の材料をそろえる仕事」として整理します。あわせて、現場でよく見かける3つの誤解を取り上げ、それぞれの見分け方と直し方を、仮の数字を使いながら説明します。

データマーケティングとは何をすることか

データマーケティングは、判断に使える材料をそろえ、その材料をもとに次の打ち手を決める進め方だと考えると分かりやすくなります。特別な分析手法のことではありません。高度な統計や大きなシステムが無くても、判断の前に材料を確かめる習慣があれば、それはデータマーケティングです。

たとえば「問い合わせを増やしたい」と考えたとき、次のような材料が必要になります。

  • どこから来た人が問い合わせているか
  • どのページを見た人が問い合わせているか
  • 問い合わせに至らなかった人は、どこで離れているか

この材料がないまま「トップページの文言を変えよう」と決めると、変えた後に良くなったのか悪くなったのかも分かりません。仮に翌月の問い合わせが10件から12件に増えても、それが文言のおかげなのか、季節や広告のおかげなのかを区別できないからです。データマーケティングは、この「分からない」を減らす作業です。

勘と経験を否定する取り組みでもありません。勘で決めた打ち手が当たったのかどうかを、後から確かめられるようにする取り組みです。経験のある担当者の「たぶんこうだ」は、確かめる価値のある仮説の宝庫。確かめた結果が積み重なるほど、勘の精度も上がっていきます。

やることと、やらなくてよいことを分けると、次のようになります。

やること 最初はやらなくてよいこと
成果を1つ決め、正しく数えるすべての行動を細かく計測する
施策ごとに比べる相手を決める高度な統計の手法を学ぶ
月に1回、決まった数字を見る毎日ダッシュボードを眺める
試した結果を1行ずつ記録するデータを統合する大きな仕組みを作る

右の列が不要というわけではありません。左の列が回り始め、「毎回ここで手間がかかる」と分かってから取り組めば十分です。順番を逆にすると、準備だけで数か月が過ぎ、その間の判断は何も変わりません。次に打つ施策を1つ選び、「どの数字が、何と比べて、どう動いたら成功か」を1行で書くところから始めれば十分です。

誤解1:ツールを入れることがデータ活用だ

GA4やBIツールを導入した時点で「データ活用を始めた」と考えてしまうことがあります。しかし、導入は材料を集める準備が整っただけの段階です。実際には、導入したあとに次のような状態で止まることがあります。

  • アクセス数は見られるが、問い合わせや購入が記録されていない
  • レポートはあるが、見る人と見る日が決まっていない
  • 数字は出るが、何と比べればよいのか決まっていない

自社がこの状態かどうかは、簡単な問いで確かめられます。「先月の問い合わせは何件で、そのうち何件がWebサイト経由でしたか」。この問いに5分以内で答えられないなら、ツールは入っていても、判断の材料はまだそろっていません。よくあるのは、GA4は入っているのに問い合わせの完了が成果として設定されておらず、訪問数しか分からない状態です(GA4の「キーイベント」設定 ― 問い合わせ完了を成果として数える)。

ツールは判断の材料を集める道具で、材料をどう使うかを決めるのは人の側です。直し方は、ツールを増やすことではなく、「誰が、いつ、何を決めるか」を1枚に書くこと。たとえば「毎月第1月曜に、担当者が問い合わせ件数と流入元を見て、広告費の配分を決める」という1行があるだけで、ツールは道具として動き始めます。

ツールを増やす前に確かめたいのは、今あるツールで答えられる質問を、実際に答えているかです。GA4とSearch Consoleだけでも、流入元ごとの成果、入口のページ、検索での表示回数までは分かります。これらを毎月見る習慣が無いまま新しいツールを足しても、見る画面が増えるだけです。新しいツールの検討は、「今のツールでは答えられない質問」が具体的に1つ挙がってからで十分です。先月の問い合わせの件数に5分で答えられなければ、ツール選びより先に成果の計測を整えてください(データ活用は「分析」より先に「計測」から)。

誤解2:データは多いほどよい

集める項目を増やすほど、良い判断ができそうに思えます。実際には逆のことが起きがちです。項目が増えるほど、設定と確認の手間が増え、判断に使われる数字は埋もれていくからです。

  • 設定する項目が増えるほど、設定ミスに気づきにくくなる
  • 指標が多いと、都合のよい数字を選んで説明してしまう
  • 見る手間が増えて、結局どれも見なくなる

2つ目は見落とされがちな問題です。仮に月次レポートに指標が30個あれば、施策の後にどれか1つくらいは良くなっているものです。その1つを取り上げて「効果があった」と報告すると、効いていない施策が続いてしまいます。指標が少なければ、こうした選び取りは起きにくくなります(都合のよいデータだけ使わない)。

判断に使わない数字は、集めても意味がありません。見分け方は、「動いたら何をするか」を先に書けるかどうか。書けない項目は、集めていても判断にはつながりません。反対に、件数が少なくても、成果と流入元のように後から取り返せない記録は、見る予定が無くても残しておく必要があります。

「動いたら何をするか」の書き方を、仮の例で示します。

指標 動いたら何をするか 判断
問い合わせ件数前年同月より2割減ったら、流入元別に原因を探す残す
広告経由の問い合わせ1件あたりの費用3か月続けて目標を超えたら、広告の配分を見直す残す
平均滞在時間書けない外す
SNSのフォロワー数書けない(問い合わせとのつながりが見えない)外す

外した指標も、数字そのものは消えません。必要になったときに開けば見られます。レポートの画面から外すことで、残した指標を読む時間と注意が増える、というのがこの作業の目的です。

データを増やしたくなる場面の典型は、会議で「この数字も見られないか」と聞かれたときです。その場で「追加します」と答える前に、「その数字が分かったら、何を決めますか」と一度聞き返してください。答えがはっきりしていれば足す価値があり、はっきりしなければ、見送っても困ることはほとんどありません。

誤解3:成功事例のとおりにやれば成果が出る

事例の記事には「この施策で問い合わせが増えた」と書かれています。ここで確かめたいのは、何と比べて増えたのかです。施策を実施した期間に、次のような変化が同時に起きていたかもしれません。

  • 季節的に需要が増える時期だった
  • 同じ時期に広告を増やしていた
  • 競合サイトが一時的に閉じていた

比べる相手が置かれていない事例は、施策が効いたのか、外の要因で伸びたのかを区別できません。世に出ている事例には、比べる相手が示されていないものや、施策とそれ以外の出来事が切り分けられていないものが少なくありません。また、失敗した事例はほとんど公開されないため、うまくいった話ばかりが目に入ります。

仮の数字で考えてみます。「記事を書き直したら、問い合わせが前月の2倍になった」という事例があったとします。ところが前月が2月で当月が3月、その業界では毎年3月に問い合わせが1.8倍になるなら、記事の効果として説明できるのは残りのわずかな部分だけです。前年の同じ月と比べていれば、この違いはすぐに見えます(「効果があった」と言う前に ― 比較対象の置き方)。

事例を読むときは、「何が増えたか」より先に「何と比べたか」を探してください。確かめたいのは、比べる相手、期間、同じ時期に起きていた出来事の3点です。3つとも書かれていない事例は、参考程度にとどめるのが安全です。

事例を自社で試すときの書き直し方も示しておきます。事例の「記事を書き直したら問い合わせが2倍」を、自社の試し方に直すと「サービスページに近い記事を3本書き直し、書き直していない似た記事3本と、3か月の問い合わせ件数を比べる。前年同期との比較も並べる」となります。こう書き直すと、事例が本当に自社でも効くのかを、自社の数字で確かめられます。

社内で事例が共有されたときも、同じ3点を聞き返す習慣が役に立ちます。「その事例は何と比べて増えたのか」「期間はどのくらいか」「同じ時期に何があったか」。答えが分からない事例は、試す価値のある候補として一覧に残し、自社で比べる相手を決めてから試す、という扱いにしてください。成功事例は、そのまま真似る手本ではなく、自社で確かめる仮説です。

では、何から始めるか

大がかりな準備は要りません。次の順番で進めると、少ない手間で判断の材料が整います。どの段階も、最初は1つの成果・1つの施策に絞るのがこつです。

順番 やること
1. 決める 何を成果と呼ぶかを決める(問い合わせ、資料請求、購入など)
2. 数える その成果を計測する(GA4のキーイベントとして設定する)
3. 比べる 前の期間、他の流入元、手を加えていないページと比べる
4. 決め直す 比べた結果をもとに、次の打ち手を決める

要になるのは、3番の「比べる」。これが抜けると、施策の良し悪しが判断できません。逆に言えば、比べられる形になっていれば、データの量が少なくても判断はできます。ただし、月に数件しか成果が無い場合は、率の上下だけで決めず、数か月分を合わせて見るか、1件ずつ中身を確かめてください(件数が少ないときに、率だけで判断しない)。

最初の1か月の目安も示しておきます。1週目に成果を1つ決め、2週目にその計測が正しく動くかを確かめ、3週目に比べる相手を決め、4週目に最初の数字を記録する。この1周が回れば、翌月からは「決め直す」に進めます(データドリブンの始め方 ― 小さく始めて、続ける)。

当てはまらない場合もあります。成果が年に数件しかない事業では、「比べる」段階で数字の差がほとんど見えません。その場合は、比べる対象を数字から聞き取りに移し、受注した顧客・失注した顧客の話を1件ずつ記録していくことが、データマーケティングの中心になります。数字が少ないことは、データマーケティングができない理由にはなりません。

まとめ

データマーケティングは、分析の専門家になることではありません。成果を決め、数え、比べる。この3つができていれば、判断の材料は足ります。ツールの導入、データの量、成功事例は、どれもこの3つの代わりにはなりません。判断の前に材料を確かめ、判断の後に結果を確かめる習慣として、次の施策から「何と比べるか」を先に決めてください。

確認リスト

  • 自社にとっての「成果」が1つ以上、言葉で決まっている
  • その成果が計測されている
  • 数字を比べる相手(前の期間・他の流入元など)が決まっている
  • 集めている項目は、判断に使うものだけに絞られている
  • 事例を読むときに「何と比べたか」を確認している

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datamake

施策の効果測定と実験設計が専門。 世に出ている成功事例の多くは、比較対象が置かれていないか、社会的背景と施策が分離されていないにもかかわらず、なぜか過去の多数の失敗事...

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