中小企業のSEO ― 最初にやる3つ
SEOの解説記事は数多くありますが、その多くは専任担当者がいる前提で書かれています。兼務で月に数時間しか使えない場合、同じやり方は取れません。限られた時間で成果につなげるには、やらないことを決めるほうが重要です。ここでは、最初にやることを3つに絞り、後回しにしてよいことも示します。
この記事でわかること
3つの優先事項は、1つの会社の数字に当てはめると判断の違いがはっきりします。以下の節では、次の架空の会社を共通の例として扱います。
この記事で使う事例(仮の数字)
- 業務用ソフトを販売する会社(架空の会社・仮の数字)。Webの担当者は兼務で、SEOに使えるのは月8時間
- 狙う語の候補は、月1,000回検索される「〇〇 とは」と、月50回の「〇〇 費用 相場」
- 既にある記事は、記事A(用語解説)が14位・表示回数1,200回・クリック12回、記事Bが6位・表示回数300回・クリック15回
- 検索からの訪問は前年9月2,000回→今年9月2,400回。問い合わせはどちらも6件
1. 勝てる検索語を選ぶ
検索数の多い語ほど、大手メディアや競合が既に対策しています。後発が同じ語を狙っても、上位に入るまでの時間と手間が見合いません。さらに検索数の多い語は意図がぼやけやすく、訪問が増えても問い合わせにつながりにくい傾向があります。狙うのは、次の条件に当てはまる語です。
- 検索数は少ないが、意図がはっきりしている語(例: 「〇〇 費用 相場」「〇〇 失敗」)
- 自社の顧客が実際に口にする言葉
- 自社が経験から書けること
判断の目安は、検索数ではなく「その語で検索した人のうち、何割が見込み客か」です。事例の2つの語でいえば、月1,000回検索される「〇〇 とは」で見込み客が1%なら10人、月50回の「〇〇 費用 相場」で半分が見込み客なら25人になります。小さい語のほうが、成果に近い人を多く集められることがあるのです。考え方はロングテールキーワードを狙う理由で詳しく扱っています。
候補の語は、社内にある言葉から集めるのが近道です。次の順で進めると、1〜2時間で20語ほどの候補が出ます。
- 過去の問い合わせ文面、見積もり依頼の件名、営業の商談メモから、顧客が使った言葉を書き出す
- 書き出した言葉に「費用」「比較」「やり方」「失敗」など、悩みの形を表す語を組み合わせる
- それぞれの語で実際に検索し、上位10件の顔ぶれを見る
- 自社の経験から、上位の記事にない具体(費用の内訳、実際にあった失敗など)を書けるかで残す語を決める
3つ目の手順で見るのは、上位の顔ぶれ。上位10件が大手の比較サイトや公的機関のページばかりなら、その語は後回しにします。反対に、個人のブログや小さな会社のページが上位に混ざっているなら、中身次第で入り込める余地があります。検索数の調べ方はキーワード調査の始め方で説明しています。
当てはまらない場合もあります。地域に根ざした商売なら、「地域名+業種」の語は検索数が小さくても最優先です。この場合は記事よりも、会社情報やGoogleビジネスプロフィールの整備が先に効くことがあります。
2. 既にある記事を直す
新しい記事を書くより、既にある記事を直すほうが早く結果が出ます。すでに検索結果に表示されているぶん、出発点が違うからです。新しい記事は、検索エンジンに評価されるまでに時間がかかります。直す記事は、次の手順で選んで直します。
- サーチコンソールで、掲載順位が11〜20位あたりの語を探す(1ページ目の下に届いていない記事が、最も動かしやすい)
- その語で上位に出ている記事と読み比べ、検索した人が知りたいのに自社記事で答えていない論点を探す
- 抜けている論点を足し、冒頭で答えの方向を示す
事例の記事Aと記事Bで、どちらから直すかを決めてみます。記事Aは順位14位・表示回数1,200回・クリック12回、記事Bは順位6位・表示回数300回・クリック15回です。記事Aは表示回数が4倍あるのにクリックが少なく、1ページ目に入ればクリックが大きく増える余地があります。記事Bはすでに1ページ目にあり、表示回数も小さいため、直しても増える余地は限られます。この場合、先に直すのは記事Aです。
直した後の結果は、すぐには出ません。検索エンジンが直した内容を読み直し、順位に反映されるまでに数週間以上かかることがあります。直した日を記録し、少なくとも1〜2か月は他の手を加えずに様子を見てください。途中で何度も書き換えると、どの変更が効いたのか分からなくなります。
よくある誤りは、文字数を増やすこと自体を目的にすることです。内容が同じまま長くしても、読者の疑問に答えていなければ順位は動きません。具体的な探し方はサーチコンソールで改善の兆しを見つけるにまとめています。
3. 成果につながっているか確認する
順位や訪問数が上がっても、問い合わせが増えなければ意味がありません。SEOの数字は動きが見えやすいため、そこで満足してしまいがちです。月に一度、次の3つを並べて確認してください。
| 見る数字 | 確認すること |
|---|---|
| 検索からの訪問数 | 増えているか。増えたのはどの記事か |
| 成果数(問い合わせ等) | 訪問と同じ方向に動いているか |
| 記事ごとの成果 | どの記事が成果に効いているか |
事例の会社で、前年の同じ月と比べてみます。今年9月の検索からの訪問は2,400回、前年9月は2,000回で、20%増えました。一方、問い合わせは今年が6件、前年が6件で変わっていません。この場合、訪問を増やした記事が成果に近い読者を集めていない可能性が高く、どの記事で訪問が増えたかを確かめます。増えたのが記事Aのような用語解説の記事ばかりなら、その記事からサービス紹介へのつなぎを見直す、という次の手が決まります。
もう1つの見方は、成果の件数そのものの確認。問い合わせフォームの送信だけでなく、記事を読んだ後に電話をかけてくる人もいます。問い合わせの際に「何で知ったか」を聞き、検索や記事の名前が挙がった件数を月ごとに数えておくと、GA4に表れない成果も拾えます。件数は少なくても、SEOの成果を判断する材料として欠かせません。
記事ごとの成果は、GA4で着地ページごとに問い合わせの数を出すと見られます。手順は着地ページ別に成果を見るにまとめています。
比べるときは、前年の同じ月と並べます。季節で検索数そのものが増減する業種では、前月との比較だけでは記事を直した効果か季節の影響か分からないからです。また成果が月数件なら、1か月の増減だけで判断せず数か月分で見ます。訪問だけが増えて成果が動かない場合の切り分けは、アクセスは増えたのに問い合わせが増えないときをご覧ください。
当面やらなくてよいこと
時間が限られているなら、次は後回しで構いません。どれも無意味ではありませんが、効果が出るまでの時間に対して手間が大きいからです。判断の基準は「月数時間の中で、成果に近い順にやっているか」です。
- 被リンクを増やす施策 … 紹介したくなる記事がある状態を作るほうが先
- 構造化データの細かい実装 … 主要ページに絞れば十分
- 毎日の順位チェック … 順位は日々振れる。週次か月次で足りる
- 記事数を競うこと … 成果につながらない記事は、増えても更新の負担になる
ただし、後回しにしてよいかは状況で変わります。取引先や加盟団体のサイトに自社を紹介してもらう依頼は、手間が小さく、見込み客の目にも触れるので、被リンクとは別の理由でやってよいことです。商品を多数扱うネットショップなら、商品ページの構造化データは優先度が上がります。順位の確認も、サイトの移転や大きな作り替えの直後だけは、毎日見て異常がないかを確かめてください。
事例の会社のように、月8時間しか使えない場合の配分の例を挙げます。語の見直しに1時間、既にある記事の改善に5時間(2本程度)、成果の確認に1時間、残り1時間を翌月の準備に充てる形です。新しい記事は、この配分で既にある記事の改善が一巡してから書き始めます。
特に記事数は、増やすほど古くなった記事の手直しが必要になります。書く本数を決める前に、既にある記事の改善に使う時間を先に確保してください。
よくある質問
Q. SEOの会社に任せたほうが早いですか。
任せる場合でも、「自社の顧客が使う言葉」と「自社にしか書けない経験」は社内にしかありません。外部に頼むなら、狙う語と、成果をどの数字で判断するかを先に社内で決めてから依頼してください。報告が順位と訪問数だけで、問い合わせの数に触れていないなら、判断の基準がずれています。
Q. 生成AIで記事をたくさん作れば、早く結果が出ますか。
本数を増やしても、成果につながるとは限りません。どこにでも書いてある内容の記事が増えると、更新の負担だけが残ります。AIは下書きや構成の整理に使い、自社の経験や数字を足すところは人が書く、という分け方が現実的です。注意点は生成AIで記事を書くときの注意点にまとめています。
Q. どのくらいの期間で成果が見えてきますか。
サイトの状態や語の競争の強さで大きく変わるため、一律には言えません。既にある記事を直した効果は数週間から数か月で順位に表れることが多く、新しい記事はそれより長くかかると考えておくのが安全です。期間を区切るなら、「半年後に、直した記事からの問い合わせが前年同期より増えているか」のように、成果の数字で確かめる時点を決めておいてください。
まとめ
中小企業のSEOで最初にやることは3つです。勝てる語を選び、既にある記事を直し、成果につながっているかを確認する。検索数の大きい語を狙うこと、記事数を増やすことは、どちらも成果と直結しません。使える時間が少ないほど、選ぶ段階での判断に時間をかけてください。
確認リスト
- 狙う語を、検索数ではなく意図で選んでいる
- 11〜20位で止まっている記事を把握している
- 新規作成より先に、既にある記事の改善に手を付けた
- 訪問数だけでなく成果数も見ている
- 前年の同じ月と比べている
- 後回しにすることを決めている
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